洗剤に含まれている成分の1つに界面活性剤があります。頑固な油汚れも界面活性剤入りの洗剤であれば落とすことが可能です。なぜ、界面活性剤入りの洗剤には高い効果があるのでしょうか。

今回は洗剤に含まれている界面活性剤の効果、油汚れを落とすメカニズムについて解説いたします。

  1. 洗剤に含まれる界面活性剤とは
  2. 界面活性剤の構造
  3. 界面活性剤の性質とは
  4. 界面活性剤を含む洗剤が油汚れを落とす流れ
  5. 界面活性剤入りの洗剤を使う際の注意点
  6. 界面活性剤は油汚れをごっそり落とす優れ物

洗剤に含まれる界面活性剤とは

界面活性剤とは界面の性質を変える働きを持つ物質のことです。界面とは2つの異なる物質が接している境界面のことです。混じり合わない2つの物質の間には必ず界面が存在します。

水と油は混ざり合わない物質の代表と言われており、水洗いだけで油汚れが落ちないのは、この性質が原因です。界面活性剤を使用すると、水と油が混じり合うようになるため、性質が変化し、汚れを落とすことができるようになります。

界面活性剤の構造

界面活性剤の構造は、主に「疎水基」と「親水基」に分けられます。疎水基は油に馴染みやすい部分であり、親水基は水に馴染みやすい部分です。この2つの基質は、それぞれの馴染みやすいものに近づくという特性を有しています。

この構造によって反発し合っている水と油が混ざり合うようにしています。

界面活性剤の性質とは

界面活性剤の性質は大きく4つに分類することができます。それぞれの作用が働くことで、頑固な油汚れを落としてくれます。

  • 湿潤・浸透作用
  • 分散作用
  • 乳化作用
  • 再付着防止作用(再汚染防止作用)

湿潤・浸透作用

湿潤・浸透作用とは油を濡れやすくし、水との親和性を高めるための作用のことです。油は食器や衣類などの油汚れに吸着しています。水と反発する性質もあるため、水で洗い流しているだけだと、油汚れの上を水が流れていくだけでほとんど落ちてはくれません。

油汚れを濡れやすくするためには、水に触れる面積を広くすることが大切です。その際に問題となるのは、水の表面張力です。

表面張力とは、液体がもつ表面積を小さくしようとする働きのことです。「葉っぱの上に丸い形の水が乗っている」「食器を濡らすと全体に水が広がらず一部に丸い形で固まったりする」「セーターが雨で濡れたのに、水が染み込まず表面に留まっている」など、これらの減少は全て表面張力によるものです。

表面積が小さいと濡らすことができる面積も小さくなってしまうため、油を濡れやすくするためには水の表面張力を弱くしなくてはいけません。界面活性剤にはその作用があり、それを湿潤・浸透作用と呼びます。

分散作用

すすのような固体粒子を水に入れて振ると、粒子同士が集まり、水と分かれようとします。これはすすが親油性であり、油と同じような働きをするからです。汚れを落とすためには、すすと水を親和させなくてはいけません。

界面活性剤を水の中に入れると、分子がすすの固体粒子に結合します。親油性であるすすの固体粒子が親水性である界面活性剤の分子で覆われることになります。これによって固体粒子を水中に分散させることが可能です。

乳化作用

乳化作用は分散作用と似たような作用です。すすのような固体ではなく、油汚れに対して働く場合は乳化作用になると考えてください。

油汚れを水で濡らすと、水の上に油が乗っている状態になります。水の中に油を入れると、表面に留まるのは水と油が反発し合う性質を有しているからです。この状態で界面活性剤を使用すると、分子が水と油の界面に集まり、油を取り込み周りを親水基で囲んだ微粒子に変化します。

周りが親水基であるため、水との親和性が高くなり、反発することなく水中に溶け込んでいきます。この作用が乳化作用です。

再付着防止作用(再汚染防止作用)

界面活性剤を使用すると、繊維や汚れの表面が界面活性剤の分子で覆われます。界面活性剤の分子同士はお互いに近づこうとしません。そのため、再度汚れ同士が吸着することはなくなります。

繊維に付着していた汚れを取り除く際に、汚れの表面と繊維の表面の両方に界面活性剤の分子が付着します。汚れ同士だけではなく、繊維と汚れが再度吸着することもありません。

この作用が再付着防止作用(再汚染防止作用)です。衣類に界面活性剤を使用して、洗濯機を使った場合、洗っている最中は界面活性剤と汚れが混在していることになります。洗い流すまでに再度付着してしまう可能性があるため、この作用は非常に重要です。

界面活性剤を含む洗剤が油汚れを落とす流れ

界面活性剤を含んでいる洗剤は以下の流れで油汚れを落とします。

  • 油汚れは衣類や食器などの表面に吸着している
  • 界面活性剤を使用することで周りが分子で覆われる
  • 水の中に溶けだしていく
  • 洗い流すことが可能になる

油汚れは衣類や食器などの表面に吸着している

油汚れは衣類や食器などの表面に吸着しています。汗をかくと皮脂のような汚れが繊維に染み込んでいるように見えますが、拡大していくと繊維の上に油汚れが乗っている状態になっています。

油汚れの吸着している力は強く、簡単には落とすことができません。油汚れを落とすためには、まず吸着している状態から離れている状態にする必要があります。

水洗いをしただけでは、油汚れの表面を流れていくだけです。スポンジを使って手洗いした場合に関しても、多少は落とすことが可能ですが、完全には綺麗になりません。

界面活性剤を使用することで周りが分子で覆われる

界面活性剤を使用すると、油汚れの周りが分子で覆われます。界面活性剤には親油性である疎水基が存在しているため、油汚れを見つけて吸い寄せられていきます。

界面活性剤は疎水基と親水基で構成されており、分子構造上、疎水基が油汚れと結びつくと油汚れの外側には親水基が存在することになります。親水基が油汚れを覆っている状態になるため、油と水が反発するという性質をなくすことが可能です。

水の中に溶けだしていく

油汚れの性質が親水性へと変わっているため、抵抗なく水の中に溶けだしていきます。この時点で衣類や食器から油汚れは完全に離れ、水の中を漂っている状態になります。

洗い流すことが可能になる

最後に水で洗い流せば、完全に油汚れを取り除くことが可能です。油汚れは非常に頑固であり、落ちずに悩んでいる方も多いでしょう。界面活性剤は油汚れの性質に着目して作られているため、ほぼ全ての油汚れを落とすことができます。

界面活性剤入りの洗剤を使う際の注意点

界面活性剤入りの洗剤の効果は高いです。しかし、使う際には注意しなくてはならないポイントもあります。

  • 別の洗剤を混ぜるのは危険
  • 皮膚への悪影響が及ぶ可能性がある

使い方次第では汚れを落とすことができても、別のトラブルを招いてしまうかもしれません。十分に注意しながら使用することが大切です。

別の洗剤を混ぜるのは危険

界面活性剤には色々な種類があり、それぞれ正しい使い方が存在します。ほぼ全ての界面活性剤に共通しているのは、他の洗剤や液体と混ぜてはいけないという点です。洗濯物に使う場合は柔軟剤と混ぜがちなため、十分に注意しましょう。

皮膚への悪影響が及ぶ可能性がある

界面活性剤には自然由来の成分で作られている天然界面活性剤と、色々な成分を使用している合成界面活性剤があります。合成界面活性剤の方が洗浄力は高い一方で、皮膚に悪影響を及ぼす可能性がある点には注意しなくてはいけません。

正しい用法を守って、万が一肌トラブルが起こった際はすぐに使用をやめるようにしましょう。

界面活性剤は油汚れをごっそり落とす優れ物

界面活性剤は頑固な油汚れを確実に落としてくれます。非常に便利な成分である反面、使い方によっては肌トラブルを招く可能性がある点には注意しましょう。

色々な種類の界面活性剤があるため、都度使い方を確認しながら、安全第一で適切に使用してください。