飲食店を経営する上で、ごみ処理は大きな問題の1つです。家庭ごみとは異なり、飲食店で出たごみは特別な方法で処理しなければなりません。処理の仕方を誤ると、トラブルに繋がることもあります。

今回のコラムでは、飲食店で働く方にぜひ知っておいてほしい、正しいごみ処理の方法についてご紹介します。

  1. 飲食店のごみと家庭ごみの違い
  2. 飲食店で出るごみの種類
  3. 飲食店の正しいごみ処理方法
  4. ごみ処理業者の選び方
  5. ごみ処理業者を選ぶ7つのポイント
  6. ごみの量を減らすためには
  7. 飲食店のごみ処理で気を付けたいマナー
  8. 責任をもってごみ処理に取り組もう

飲食店のごみと家庭ごみの違い

飲食店で出るごみは、家庭ごみとどう違うのでしょうか。家庭ごみは、指定された場所に出しておけば市区町村が回収してくれます。しかし、飲食店のごみは、家庭ごみの集積所に出すことはできません

なぜなら、飲食店のごみは「事業ごみ」に分類されるからです。事業ごみは、事業活動を行うことで発生したごみのことを指し、事業者が自分で処理しなければなりません。

事業ごみは一般廃棄物と産業廃棄物の2つに分けられますが、それらについてはこの後詳しく解説していきます。

飲食店で出るごみの種類

一般廃棄物と産業廃棄物に該当するごみの種類をそれぞれご紹介します。

一般廃棄物

  • 食べ残し
  • 紙類(割り箸、紙コップ、レシート、紙ナフキンなど)
  • 調理で発生する生ごみ

上記の通り、一般廃棄物に該当するのは家庭ごみと同じような可燃ごみです。

産業廃棄物

  • 不燃ごみ(スプーンやフォーク、アルミホイル、ラミネート加工したメニュー表など)
  • 粗大ごみ(蛍光灯、パソコン、ハンディ機器など)
  • 不燃ごみとして処理できない臨時ごみ(蛍光灯や廃油、グリストラップの汚泥など)
  • 資源ごみ(段ボール、古紙、空き瓶、ペットボトルなど)

産業廃棄物に該当するごみは大きく4つに分けられます。飲食店で出るごみは、産業廃棄物が大半を占めていると言えます。

飲食店の正しいごみ処理方法

飲食店で出るごみを正しく処理する方法をお伝えします。

一般廃棄物

一般廃棄物を処理する方法として、以下の2種類が挙げられます。

  • 処理施設へ持ち込む
  • 廃棄業者に依頼する

処理施設へ持ち込む

一般廃棄物は、市区町村の専用施設に持ち込むことができます。

専用施設に廃棄物を運搬する手間はかかりますが、比較的安価で処理してもらうことが可能です。1度だけ持ち込む場合は、手続きなどを行う必要はありません。

継続してごみを持ち込む際は、搬入を開始する1ヶ月前までに、申請書を施設に提出しなければならないため注意が必要です。

廃棄業者に依頼する

廃棄業者にごみの回収から処分まで一貫して依頼することもできます。指定された場所にごみを出しておけば良いため手間を省くことができる反面、費用はそれなりに高額であることが一般的です。

お店で発生した大量のごみを運搬するのは大きな負担であることから、廃棄業者に依頼する飲食店がほとんどです。

産業廃棄物

産業廃棄物を市区町村の施設に持ち込むことは禁止されています。産業廃棄物を一般廃棄物と同じように処理してしまうと、不法投棄とみなされ処罰の対象となってしまいます。

また、依頼した業者に対し、以下のような目的で「産業廃棄物管理票」を交付しなければなりません。

  • 産業廃棄物を処理する流れを業者に確認してもらう
  • 業者が適切に処理したことを把握する

産業廃棄物を処理する責任は回収業者ではなく事業者、つまり飲食店にあります。業者に依頼した後も、最後まで責任を持って対応しましょう。

資源ごみ

資源ごみとは、再資源化が可能なごみのことを指します。一般廃棄物や産業廃棄物としっかり分別し、民間の業者にリサイクル処理を依頼しましょう。

ごみ処理業者の選び方

先述したように、産業廃棄物を適切に処理する責任は飲食店にあります。そのため、飲食店は優良な処理業者を見極めなければなりません。安心して任せられる処理業者を選ぶ方法をお伝えします。

一般廃棄物

事業系の一般廃棄物は、「一般廃棄物収集運搬業許可」を受けた業者に処理してもらう必要があります。

基本的には、一般廃棄物の処理は市区町村が管轄しているため、許可を得た業者の一覧をホームページで公開しているところが多いです。まずはお店がある地域のホームページを確認してみてください。

また、民間の業者に委託している地域もあるため、ホームページで情報が得られなかった場合は役所の環境課に問い合わせましょう。

産業廃棄物

産業廃棄物を処分する業者は、都道府県から汚泥や廃油といった項目別に「産業廃棄物収集運搬業許可」を受ける必要があります。そのため、お店で発生する産業廃棄物の項目それぞれについて許可を得ている業者を選んでください。

産業廃棄物収集運搬業許可を得た業者については、環境省のホームページに詳しく記載されています。

ごみ処理業者を選ぶ7つのポイント

ここからは、適切なごみ処理業者を選ぶ時に確認すべき7つのポイントについて解説していきます。

  • 収集運搬業の許可を得ているか
  • 収集車両の台数は十分か
  • 費用が明確に設定されているか
  • ごみ処理の流れが明確に決まっているか
  • ごみ処理の曜日や時間がお店に合っているか
  • 従業員教育が行き届いているか
  • 即日回収を引き受けているか

収集運搬業の許可を得ているか

お伝えしているように、事業ごみを回収する業者は、都道府県や市区町村からの許可を得ていなければなりません。許可を得ていない業者に依頼して、トラブルがあった場合は飲食店が責任を問われます。そのため、許可の有無を確実にチェックしておきましょう

収集車両の台数は十分か

業者が所有するごみ収集車両の台数が多いほど、多くのごみを効率良く回収することができます。また、ごみ収集車両の種類が豊富であるということも、スムーズにごみを回収できる業者の大きな特徴です。

費用が明確に設定されているか

ごみ処理にかかる料金も、業者を選ぶ上で重要な要素です。中には法外な料金を請求する業者もあり、そういった業者と契約してしまうと、大きく損をすることになりかねません。必ず複数の業者を比較した上で、作業量に見合った料金かどうかを判断しましょう。

一般廃棄物の回収を依頼する場合の費用は、「週3回の回収で1万円前後」を目安にしてみてください。

ごみ処理の流れが明確に決まっているか

契約前に、ごみ処理の流れを明確に示してくれる業者を選びましょう。そうした信頼できる業者に依頼すれば、不適切な分別や不法投棄を防止できるだけでなく、トラブルが起こってしまった際に誠意ある対応をしてくれることが期待できます。

ごみ処理の曜日や時間がお店に合っているか

飲食店がごみを回収してもらいたい日時は、定休日や営業時間によってある程度決まっています。

そのため、お店が回収を希望する時間と業者が稼働する時間が合っている業者と契約すると良いです。ごみを長期間放置してしまうと、悪臭や害虫の温床になりかねません。

従業員教育が行き届いているか

ごみ回収の時間によっては、営業中に業者の従業員が出入りすることもあるでしょう。そのため、従業員の見た目には最低限の清潔感が求められます。また、従業員に知識があれば、トラブルが起こっても迅速に対応してもらえる可能性が高いです。

  • 身だしなみ
  • 態度
  • ごみ処理に関する知識の有無

従業員のこういった要素を踏まえて、契約するかどうか判断することをおすすめします。

即日回収を引き受けているか

飲食店の売上は季節によって異なり、それに応じてごみの量も変化します。そのため、通常より多くのごみが出て回収の頻度を増やしてもらいたいケースがあるでしょう。即日回収を引き受けてくれる業者を選ぶのがベターです。

ごみの量を減らすためには

業者が回収してくれるからといって、むやみにごみの量を増やしてはいけません。ごみの量を減らすことで、環境への配慮やごみ処理費用の削減が可能になるためです。

ごみの量を少しでも減らすために、以下の2点を意識しましょう。

食品ロスを削減する

飲食店のごみを減らす最も有効な方法は、食品ロスの削減です。食材を仕入れた量と実際に使用した量をこまめにチェックすることで、期限切れによる食材の廃棄が発生しにくくなります。

また、オーダーミスによる食品ロスも意識して防げると良いです。ホールとキッチンで綿密な連携を取り、正確に料理を提供できるよう従業員に働きかけましょう。

従業員の意識を変える

オーナーだけが意識しても、飲食店のごみを減らすことは難しいです。

  • 食器や調理器具を丁寧に扱う
  • 消耗品をむやみに使いすぎない

こういったことを従業員に徹底してもらいましょう。年間を通して意識し続けることで、かなりの量のごみを削減することができます。

飲食店のごみ処理で気を付けたいマナー

飲食店でごみを出す際に守るべきマナーをお伝えします。

液だれしたままごみを出さない

調理で出た生ごみや食べ残しの中には、水分を含むものも多くあります。また、お客様が使用した割り箸やストローといったごみは、袋に穴を開けてしまう可能性が高いです。そのため、飲食店でごみを出す際には液だれが生じやすいと言えます。

液だれを放置したままごみを出すと、業者が回収する際に迷惑をかけてしまいます。ごみ袋を二重にしたり、液だれを見つけたら拭き取ったりするよう意識しましょう。

ごみを長期間放置しない

生ごみを長期間放置してしまうと、カラスに荒らされたり、悪臭や害虫の発生源になったりすることがあります。

業者の方が回収しにくくなるだけでなく、近隣住民に不快な思いをさせてしまうこともあるでしょう。そうなると、お店のイメージが悪くなることは避けられません。

業者にこまめな回収をお願いする、ごみを出してから回収してもらうまでの間をなるべく短くするといった工夫が必要です。

責任をもってごみ処理に取り組もう

飲食店において円滑にごみ処理を進めるためには、処理業者との信頼関係が欠かせません。ごみを出したり、業者とコミュニケーションを取ったりする際は、マナーや思いやりを意識した言動を心掛けましょう。

業者に回収してもらった後も、適切な処理が完了するまで責任を持ってごみ処理と向き合うことが大切です。