飲食店の厨房の清掃において特に面倒なのが、フライヤーのお手入れです。なかなか落ちない焦げ付きや油汚れを放置してしまっている方も多いのではないでしょうか。

フライヤーを汚れたままにしておくと、油の温度が上がりにくくなるだけでなく、異物混入や火災といった重大な事態に発展する恐れもあります。

今回のコラムでは、飲食店のフライヤーを正しく清掃する方法をご紹介します。

  1. 業務用フライヤーの仕組みとは
  2. フライヤーの汚れを放置するリスク
  3. 飲食店のフライヤーを清掃する手順
  4. フライヤーを清掃する際の注意点
  5. こまめに点検して安全にフライヤーを使おう

業務用フライヤーの仕組みとは

多くの飲食店で利用される業務用フライヤーは、およそ4〜12Lの油を入れておくことができ、容量が大きな据え置き型とコンパクトな卓上型の2種類に分けられます。

従来のフライヤーでは、油を入れる油槽の中にある浸管(パイプ状の部分)に燃焼ガスを通過させ、油の温度を上げる「浸管加熱方式」が採用されていました。

近年では、油槽の壁を通過するガスで油に熱を与える「側面加熱方式」や、電気を動力としたヒーターで加熱するフライヤーが増えてきています。

家庭用のものに比べて熱効率の良い業務用フライヤーですが、その性能を維持しつつ年々コンパクトになってきています。

フライヤーの汚れを放置するリスク

フライヤーの汚れを放置しておくと、以下のようなリスクが生じます。

  • 熱効率の低下
  • 異物の混入
  • 一酸化炭素中毒の発生

熱効率の低下

ガスで加熱するフライヤーに搭載されている排気フィルターが詰まると、不完全燃焼を起こす可能性があります。燃焼効率が悪くなっているため、油の温度が上がりにくい状態です。

また、油槽やヒーターに汚れがこびりついていると熱が油にうまく伝わらず、熱効率の低下を引き起こします。

このような原因で油の温度が上がりにくくなると、温度を上昇させるために余分なエネルギーが消費され、ガス代や電気代が多く必要になります。さらに、揚げ時間が長くなることで料理の提供が遅れ、お客様を待たせたり回転率が下がったりしてしまうでしょう。

異物の混入

汚れが残った状態で油の温度を上昇させると、揚げカスや焦げ付きが油の中にぷかぷかと浮いてきてしまいます。新たに揚げ物を調理すると、古い揚げカスが付着して味が落ちるだけでなく、汚れや焦げ付きがこびりついた料理をお客様に提供してしまいかねません。

一酸化炭素中毒の発生

ガスで加熱するタイプのフライヤーにおいて、排気フィルターが揚げカスや汚れで詰まってしまうと、不完全燃焼によって一酸化炭素中毒や火災が発生する危険があります。従業員やお客様の安全を脅かす事態が生じないよう、フライヤーの清掃は怠らずに実施しましょう。

飲食店のフライヤーを清掃する手順

ここからは、飲食店でフライヤーを清掃する際の流れを解説していきます。排油はできる限り毎日実施しましょう。排油以外の工程については、最低でも2週間に1回行うことが望ましいです。

  1. 排油
  2. 油槽への注水
  3. フライヤーの加熱
  4. 油槽内の清掃

排油

まずは、90℃以下を目安として油の温度が下がるのを待ちます。その後、ザルや油こし網を用いて、揚げカスや汚れを取り除きながら排油を行いましょう。

油槽に揚げカスが残っていたら、再給油(油槽に再び油を注いで排油を行うこと)などによって完全に取り除いてください。排油口に汚れが詰まって油がなかなか出てこない時は、細い棒などを使って優しく押し出すと良いです。

また、油の温度が下がらないうちに排油すると排油口が傷む恐れがあります。さらに、浸管やヒーターに油が焦げ付いて「空焚き」のような状態が生じ、火災の原因となりかねません。油の温度が下がりきるのを待ってから排油を行いましょう。

油槽への注水

油を除去したら排油口を閉め、排水を受けるバケツなどの容器を準備します。換気設備を起動してから油槽に水かお湯を注ぎ、洗剤を入れましょう。

なお、多くのフライヤーには、油を入れる量の目安となるラインが引かれています。この適正ラインを超えないように、お湯や洗剤を入れてください。

フライヤーの加熱

油槽内の液体が沸騰するまでフライヤーを加熱します。液体が蒸発して空焚きのような状態が発生するのを防ぐため、フライヤーからは決して目を離さないでください。加熱を止めたら、ガスの元栓を閉めましょう。

油槽内の清掃

加熱を止めたら、やけどの心配がなくなる程度まで温度が下がるのを待ちます。安全な温度まで下がったらお湯を抜き、洗剤をつけたブラシなどで油槽をごしごし磨きましょう。

浸管が搭載されていて取り外せないフライヤーの場合は、油量の適正ラインと浸管上部との間に湯面が来るように液量を調整してみてください。フライヤーについたままの浸管も磨きやすくなります。

その後、お湯を全て抜き、再びお湯を適正ラインまで入れて洗剤を洗い流すまでの作業を2〜3回繰り返せば、ある程度の汚れは取り除くことができます。汚れを取り切ったら、洗剤を水で完全に洗い流して清掃完了です。

どうしても取れない汚れがある場合には、煮沸や洗剤を使った清掃を定期的に行い、時間をかけてきれいにする他ありません。清潔なフライヤーを維持するためには、定期的に清掃することが大切です。

フライヤーを清掃する際の注意点

フライヤーを清掃する際には、以下の4点に注意して行いましょう。

  • 浸管と油槽の接合部を毎月清掃する
  • 厚手のゴム手袋を着用する
  • 排油バルブを一気に開かない
  • 廃油を正しく処理する
  • 油汚れに適した洗剤を使用する

浸管と油槽の接合部を毎月清掃する

基本的に、浸管と油槽の接合部は汚れや焦げ付きが溜まりやすい状態にあります。それらを放置して使用し続けると油漏れしやすくなり、火災が発生してしまう可能性があります。

そのため、1ヶ月に1回程度は必ず油槽と浸管の接合部を念入りに清掃してください。焦げ付きを取り除き、浸管の金属の色が見える程度まできれいにできると理想です。

厚手のゴム手袋を着用する

90℃以下まで油温を下げたとしても、フライヤーの清掃を素手で行うのは非常に危険です。また、温度が下がり切っていない箇所に誤って触れてしまう可能性もあります。火傷のリスクを少しでも軽減するために、厚手のゴム手袋を着用して作業を行いましょう。

排油バルブを一気に開かない

据え置き型のフライヤーでは、排油したり油槽の中で沸騰させたお湯を排出したりする際に排油バルブを開きます。この時、バルブを一気に開いてしまうと高温の油やお湯が飛び散って、火傷やケガの原因となりかねません。

排油バルブは必ず少しずつ開き、お湯や油をゆっくり除去することを心掛けてください。

廃油を正しく処理する

フライヤーから取り除いた油は、決して排水溝に流してはいけません。専用の凝固剤を入れてかき混ぜると、油は固まります。冷ました後にそのまま燃えるゴミとして処理することができます。

また、廃油缶などに保管しておいて、リサイクル業者に回収を依頼するのも1つの方法です。回収にかかる費用は業者によって異なりますが、無料で回収してくれる場合もあります。

油汚れに適した洗剤を使用する

油汚れは酸性の汚れであるため、酸性の性質を打ち消すアルカリ性の洗剤を使用するのが望ましいです。昨今多く販売されている、フライヤーの洗浄や油汚れの除去に特化した業務用洗剤を選ぶのも良いでしょう。

適切な洗剤を使用することで汚れが落ちやすくなり、使用する洗剤の量を削減することができるでしょう。

こまめに点検して安全にフライヤーを使おう

飲食店のフライヤーは、使用中だけでなく清掃中も事故や火傷に注意して取り扱わなければなりません。しかし、今回ご紹介したポイントを押さえて清掃すれば、使用中に発生しうるリスクを軽減することができるでしょう。

定期的な清掃を安全に実施することでフライヤーを正しく使用し、お客様に美味しい揚げ物を提供できると良いです。