飲食店において、お客様を満足させるための要素は料理の見た目や味だけではありません。店内を清潔に保ったり、正しく管理された安全な食品を使った料理を提供して食中毒を予防するなど、衛生管理を徹底することが不可欠です。

また、近年は感染症が流行したこともあり、人々の衛生に対する意識が高まっているため、飲食店では今まで以上に衛生管理に気を配ることが求められます。

そこで今回のコラムでは、飲食店で実践すべき衛生管理の対策について詳しく解説していきます。

  1. 飲食店において衛生管理が重要な理由
  2. ホールの衛生管理のポイント
  3. 厨房の衛生管理のコツ
  4. 飲食店の従業員ができる衛生管理
  5. 飲食店を安全に経営するために必要な資格
  6. 誰もが気持ちよく過ごせる飲食店を作ろう

飲食店において衛生管理が重要な理由

以下の3つの理由から、飲食店では衛生管理が特に重要視されています。

  • お客様や従業員の安全を守る
  • お客様の満足度を高める
  • 従業員が働きやすい環境を作る

お客様や従業員の安全を守る

食材を取り扱う飲食店には、食中毒やノロウイルスといった、お客様や従業員の安全を脅かすリスクが多くあります。食材を適切に管理したり、厨房やホールをこまめに清掃することで、感染症の原因となる菌を除去することが欠かせません。

衛生管理を徹底することは、お客様が安心して食事をしたり、従業員が健康に勤務することに繋がるのです。

お客様の満足度を高める

食事をするテーブルや椅子、トイレが汚れていると、せっかくの楽しい食事が台無しになってしまいます。座席から目に入る可能性のある箇所が清潔に保たれていれば、お客様は気持ちよく食事をすることができ、お店の印象もアップするでしょう。

飲食店がお客様に与えるイメージは、店内の清潔さに大きく左右されると言えます。快適に安心して利用できる環境が整っているかを、お客様目線で確認することが大切です。

また、感染症が流行している現代では、感染対策が徹底されているかどうかも、来店する上での大きな判断材料となります。

従業員が働きやすい環境を作る

お客様が目にしないであろう厨房や調理器具、掃除道具についても、日頃から衛生管理をしっかりと行うことが大切です。厨房や調理器具が汚れていると、調理の際に雑菌が混入する可能性が高まり、お客様に提供する食材の衛生状態も悪くなってしまいます。

また、きれいな厨房で作業する方が、従業員のモチベーションも高まるでしょう。飲食店の衛生管理は、スタッフの労働環境を整備するのにも役立っています。

ホールの衛生管理のポイント

食事をするテーブル周りの衛生状態は、お客様が特に重視するポイントであると考えられます。そのため、ホールの衛生管理のレベルはお店のイメージに直結すると言えます。

  • テーブル・椅子
  • 箸・スプーン・フォーク
  • メニュー表
  • トイレ

上記のような部分について、こまめに念入りに清掃する必要があります。それぞれのポイントを詳しく解説していきます。

テーブル・椅子

お客様が直接触れるテーブルや椅子。調味料が飛び散っていたり湿っていたりすると、お客様の気分が下がってしまい、楽しみに料理を待つことも食事を満喫することもできないでしょう。

開店前にふきんで丁寧に拭き上げるだけでなく、お客様が入れ替わるタイミングで毎回汚れを拭き取り、常にきれいな状態で新しいお客様を迎えることが大切です。また、テーブルや椅子の下に紙類や料理の食べこぼしが落ちていないかどうかも念入りに確認してください。

繁盛している飲食店では特に、お客様を早くご案内したい思いから、どうしてもテーブルや椅子の清掃が煩雑になりがちです。お客様が快適に過ごせるくらい座席がきれいかどうかを、一呼吸おいて客観的にチェックするよう意識してみてください。

箸・スプーン・フォーク

お客様が直接口をつけるカトラリー類。使い捨てのものであれば問題ありませんが、繰り返し使用している場合は、常に清潔な状態で提供することが求められます。

きれいに洗うことはもちろん、拭き取る際に直接触れて手垢が付着することがないよう十分注意しましょう。ふきんでカトラリーを覆うようにして拭き取ることをおすすめします。

特に、金属製のカトラリーは水垢や皮脂が目立ちやすいです。お客様に提供する前に、汚れていないかどうかを念入りにチェックしてみてください。

メニュー表

ホールの衛生管理に取り組む上で意外と見落としやすいのが、メニュー表の清掃です。わくわくしながら手に取ったメニュー表が汚れていたとなると、あまり良い気はしないでしょう。

テーブルや椅子を拭き取るタイミングで、メニュー表の汚れも一緒に拭き取ってみてください。

また、耐久性を上げるためにラミネート加工されたメニュー表は水分をはじくため、ふきんを通して付着した雑菌が繁殖して不快なニオイが生じる可能性があります。メニュー表を多めに用意する、1回1回ふきんを交換するといった防臭対策も合わせて実施しましょう。

トイレ

「飲食店の印象はトイレで決まる」とも言われるくらい、トイレの清潔さはお客様の満足度に大きく影響します。また、トイレが不衛生だと、お客様や従業員がトイレットペーパーや蛇口などを介して食中毒に感染する可能性があります。

便器やタンク、排水管など、細部にわたって清潔さを保つことが求められます。また、トイレの印象を決めるポイントの1つとして「ニオイ」が挙げられます。消臭対策も欠かさず行いましょう。

トイレの清掃方法についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムをチェックしてみてください。

飲食店のトイレ掃除の方法を解説!他店と差をつけるコツとは

厨房の衛生管理のコツ

厨房の衛生状態を良好に保つためには、以下の3点に注意する必要があります。

  • 正しい食材管理を習慣づける
  • 調理器具を清潔に保つ
  • 害虫・害獣対策を徹底する

正しい食材管理を習慣づける

食材を安全な状態で調理してお客様に提供するためには、正しい方法で管理することが欠かせません。保存方法が異なる様々な食材を従業員に正しく管理してもらうためには、食材の保存方法を明記したマニュアルを作成すると良いです。

また、冷凍庫や冷蔵庫の温度をこまめに管理するなど、保存環境を整える対策も行っていきましょう。

調理器具を清潔に保つ

フライパンや鍋に付着する油汚れ、まな板や包丁の汚れなどをそのままにして調理していると、雑菌が繁殖してしまいます。こまめに熱湯で消毒するよう心掛けてください。

また、包丁やまな板に関しては、肉用、魚用、野菜や果物用をしっかりと区別することが大切です。

生の肉や魚には食中毒の原因となる菌が付着している可能性があり、水や洗剤で洗っても取り除けません。食材の種類ごとに調理器具を使い分けないと、人体に害を及ぼす菌が混入した食材を生で提供するといった事態が発生する恐れがあります。

害虫・害獣対策を徹底する

飲食店で発生する可能性がある害虫、害獣として、ハエやゴキブリ、ネズミなどが挙げられます。これらの害虫が現れると、お客様に不快感を与えるだけでなく、大切な食材が害虫のエサとなってしまう可能性もあるでしょう。

生ごみを店内に長時間放置しない、菌や悪臭の温床となるグリストラップや排水口などの箇所をこまめに清掃するといった対策が求められます。

飲食店の従業員ができる衛生管理

飲食店で働く従業員の身だしなみについても対策することが必要です。具体的には、以下の3点について周知すると良いでしょう。

  • 手洗い・うがいの徹底
  • 頭髪点検
  • 体調の申告

手洗い・うがいの徹底

手洗いやうがいは、飲食店の衛生管理における基本中の基本です。手指を介して感染する食中毒や季節性の感染症を予防するためには、手首から指先まで丁寧に洗うだけでなく、調理を開始する前やお手洗いに行った後など、こまめに実施することも大切です。

さらに、手を洗った後でアルコール消毒を実施すると、ウイルスや細菌をより確実に取り除くことができます。

頭髪点検

毛髪は、飲食店の異物混入の原因となりやすいです。そのため、頭髪について明確な規定を設け、全ての従業員で基準を統一することが求められます。具体的には、以下のような規定があると良いでしょう。

  • 長い髪の毛を結ぶ
  • 前髪やおくれ毛は帽子やバンダナの中に入れ込む
  • 髪が耳や眉毛にかからないよう整える

体調の申告

感染症が流行するようになってから普及しつつある、勤務前の従業員の健康観察。衛生管理の観点からも、従業員が体調を申告することは非常に重要です。

発熱や頭痛、咳などの症状が見られる場合は欠勤する、勤務中に体調が悪化したら責任者に報告して早退するといった迅速な判断が従業員1人1人に求められます

飲食店を安全に経営するために必要な資格

飲食店を経営する際には、以下のような資格を取得しておくことをおすすめします。

  • 食品衛生責任者
  • 防火管理者

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、飲食店を営業する場合に必要となる国家資格であり、衛生管理の方法や、従業員に衛生対策を実践してもらうためのノウハウが必要となります。

栄養士や調理師といった資格を取得している方、あるいは自治体が定める食品衛生責任者養成講習を受講した方に与えられます。

防火管理者

防火管理者とは、市町村で実施される講習を受けることで取得できる、消防法で定められた国家資格です。火災を防止するための必要な業務を適切に遂行でき、さらに、従業員を管理、監督、統括する能力が求められます。

30人以上を収容できる、大きな規模の店を開業する場合は、防火管理者の資格を持つスタッフが常勤していなければなりません。

また、飲食店の広さによって必要な資格の種類が異なる点に注意しましょう。延床面積が300平米以上の場合は「甲種防火管理者」、300平米未満の場合は「乙種防火管理者もしくは甲種防火管理者」の取得が必要です。

誰もが気持ちよく過ごせる飲食店を作ろう

飲食店の衛生管理の重要性や、具体的な対策方法についてご紹介してきました。ホールや厨房の清掃、食品の取り扱いなど、細部にわたって衛生管理を実施することが、飲食店の利用者の安全を守ったり、飲食店の印象をアップさせることに繋がります。

日頃から徹底して対策することで、食事をするお客様、勤務する従業員が快適に過ごせる飲食店を作りましょう。