いまや一家に一本の常備が必須となったアルコール消毒液。
使用期限も未開封で3年ほどと長めに設定されているので、安く買える時に何本か購入して保管している人もいるのではないでしょうか。
しかし、濃度の高いアルコール消毒液を誤った方法で扱ってしまうと、取り返しのつかない事故を起こす可能性もあるのです。
今回は、アルコール消毒液の適切な保管について解説します。
アルコール消毒液は危険物!
特定の濃度条件を満たしたアルコール消毒液は、消防法の危険物として定められています。
アルコール消毒液が身近になった今こそ、取り扱いの安全性についてきちんと考えてみましょう。
濃度60%以上で危険物
消防法上、アルコール濃度が重量%で60%以上のアルコール消毒液は「危険物」とされています。
「重量%」はある物質100g中に含まれている特定の物質のグラム数を指します。容量100gの消毒用アルコールにエタノールが80g含まれる場合は危険物となります。
エタノールを有効成分とするアルコール消毒液の場合は、一般的に濃度をVol%(体積%)で示されているため、ラベルを確認して危険物かどうか確かめるのがよいでしょう。
上の画像は2種類の別メーカーから発売されているアルコール消毒液を見比べたもの。どちらも体積%で表示されているのが分かります。
なお、「体積%」は体積全体に占める溶け込んだものの体積のパーセントを指します。
何を見て判断するか
商品パッケージのうち、以下の2点を参考にするのがよいでしょう。
- 危険物の品名
- 「火気厳禁」の表示
法律に基づいたボトルのラベルなどへの記載義務があるものなので、必ず確認しておきましょう。
危険物の品名
危険物としてのアルコールは、「第四類危険物アルコール類」に分類されています。
危険物の品名欄にこの記載があった場合、危険物に該当すると考えましょう。
「火気厳禁」の表示
アルコール類のうち「火気厳禁」と表示があるものは、こちらも消防法上の規定で濃度60%以上(重量%)と分かります。
こちらは分かりやすいよう、赤地に白抜きで「火気厳禁」と書かれています。
消毒に必要なアルコール濃度は?
厚生労働省の見解によると、手や指、モノなどに付着したウイルスを無毒化するには濃度70%以上95%以下のエタノール(アルコール消毒液)が適しているとされています。
70%以上のエタノールが入手困難な場合、60%台のエタノールを使用した消毒も差し支えないとしています。
参考:新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
この指針は体積%を想定した濃度設定とされているようですが、取り扱いに注意が必要な点には変わりありません。
アルコールと直射日光、火気の危険性
直接的に火と関わりがないように思える場所でも、アルコール消毒液の設置や保管には配慮が必要です。
性質上火気は厳禁
学校の理科の授業などでも学習することですが、アルコールは火気に近づけると引火しやすい性質を持っています。
ですので、アルコールに火気はご法度。
消毒用アルコールを使用・管理する付近では、喫煙や調理など火気の使用を必ず避けるようにしましょう。
直射日光が危険な理由
直射日光が当たる場所での保管が危険な理由は可燃性蒸気。
消毒用アルコールが蒸発すると、燃えやすいガス「可燃性蒸気」が発生します。可燃性蒸気は空気より重いため低い所に溜まりやすく、蓄積した場合引火することで爆発を引き起こす恐れがあります。
ダイレクトに日光が当たる暖かい場所で熱されると、アルコール消毒液は可燃性蒸気を発生させます。
詰め替え時には換気が必須
消毒用アルコールの詰め替えをする際も、可燃性蒸気が発生する可能性があります。
作業時は通風性の良い場所や常時換気が行える場所を選び、可燃性蒸気を滞留させないよう心掛けることが必要です。
アルコール消毒液使用時の注意
最後に、使用・保存場所や使い方について、もう一度適切な対応方法を確認しましょう。
設置・保管場所
以下のような場所でアルコール消毒液を使ったり、未開封のものであっても保存したりするのは厳禁です。
- キッチン
- 喫煙所
- 窓際
- 車の中
- その他、気温が上がりやすい場所
特に夏の車内は温度がとても上りやすいです。
お出かけの時など、車でアルコール消毒液を使いたい場合も多いでしょう。その場合は車内にアルコール消毒液を常備しておくのではなく都度持ち込むようにし、長時間車を離れる際は必ずバッグに入れて持ち運ぶようにしましょう。
外出用の小さなボトルのものやペンタイプのものであれば安心ですね。
火気を近づけない
アルコール消毒液を使用した直後に喫煙をしたり、花火で遊んだりするのはやめましょう。
自分では火種を近づけていないつもりでも、アルコール消毒液の温度や気温など条件次第では引火するおそれがあります。
詰め替え容器の材質に気を付ける
市販されている容器にはアルコール耐性があるものとそうでないものがあり、耐性がない場合はひび割れや変色が起こったり、溶けてしまったりする可能性があります。
容器の劣化によりアルコールが外に流れると、他の室内条件次第では引火につながりかねません。
商品パッケージを確認して「アルコールOK」の記載があるものだけに消毒液を詰め替えましょう。
アルコール耐性がない材質
- PET(ポリエチレンテレフタラート)
- PS(ポリスチレン)
- 軟質のPVC(ポリ塩化ビニル)
100均などで見かけるスプレー容器の多くはPET(ポリエチレンテレフタラート)素材です。
安く済ませたい! と100均容器を利用する場合は、アルコール消毒液に使用できるものか表記をよく見極めましょう。
アルコール耐性がある材質
- PE(ポリエチレン)
- PP(ポリプロピレン)
- 硬質に限りPVC(ポリ塩化ビニル)
アルコール可であっても「高濃度のものは使用不可」とされているケースもあるので、材質は参考程度に表記されている商品のスペックを重視しましょう。
アルコール消毒液は火気と直射日光を避けて!
アルコール消毒液はコロナ時代を乗り切る大切なアイテム。
しかし正しく使えないと、予想だにしなかった事故の原因となってしまうかもしれません。
保管場所や設置場所、利用方法にはよく注意してアルコール消毒液とお付き合いしましょう。