コップやペットボトル、電気ケトルに入れた水を何日か放置していたら、濁って見えるようになったという現象を体験したことはありませんか?
このような経験があると、もしかして「食べ物と同じように水も腐ってしまうのかも…」と不安になってしまうかもしれません。
ミネラルウォーターのペットボトルにも、消費期限や賞味期限が記載されていますよね。
インターネット上でも「変な味がする気がするけど、お水って腐るの?」という疑問の声を見かけました。
そこで、今回は「水が腐る」現象について解説します。
ペットボトルのお水や水道水をおいしく飲むための期限、冷蔵庫での保存方法などについてもお話していきますね。
水が腐ることはあるの?
「水が」腐るということはない
結論から言うと、水そのものは腐りません。
中学校の授業で、炭素を含んだ物質を「有機物」、含まない物質を「無機物」と呼ぶことを学習したと思います。
水は水素原子(H)2つと酸素原子(O)1つが結合した「H2O」という分子なので、無機物に分類されます。
「腐る」「腐敗する」という言葉は「有機物が微生物の作用によって変質する現象」のことを指すため、理論上「水が腐る」という現象はありえません。
水の臭いや色が変わるのはなぜ?
水は腐らないのなら、放置した水の性質が変わっているのはなぜでしょう。
「腐った水」は「腐ったように見える水」
変な臭いがしたり、色が変わっているように見えたりしている水は「腐った水」ではなく、正確には「腐ったように見える水」です。
腐ってしまったのは水ではなく、中に入っている栄養分(有機物)。
口を付けたり空気に触れたりしたことで水の中に微生物が入り込み、それらが分解され変質すると、あたかも水が腐っているかのように見えるのです。
腐らなくても「変質」はする
ここまで、一般的に言われる「水が腐る」という現象について確認してきました。
説明の中で「空気にも触れないし微生物も混ざらないのに、なぜペットボトルの水には賞味期限があるの?」と疑問に思った方もいるのでは?
また、水道水を飲む機会が増える夏場も刻一刻と近づいています。
「飲みたい時に蛇口をひねって水を汲んでいるけれど、水道水には微生物が増えないの?」というクエスチョンも。
ここからは、「ペットボトル」「水道水」のそれぞれについて見てみましょう。
ぺットボトルの水に賞味期限がある理由は?
ペットボトルの水に消費期限が設けられている理由は、以下の3点です。
- 一般的に飲まれている水は純粋な「H2O」ではない
- ペットボトルはたくさんの雑菌が水に入り込みやすい
- 水というより容器の保存期限
一般的に飲まれている水は純粋な「H2O」ではない
水素原子と酸素原子で出来た純粋な水は「理論純水」と呼ばれています。
理科の実験で器材を洗浄する時などに見かけますが、実は自然界には存在しないもの。
普段身の回りで見かける水には二酸化炭素などの何らかの物質が溶け込んでいます。
例えばミネラルウォーターは、その名の通り鉄分やナトリウムなどのミネラルを含みます。
水に溶け込む「何らかの物質」の中には当然微細な有機物も含まれていますので、これが分解され変質することは十分にあり得ます。
ペットボトルはたくさんの雑菌が水に入り込みやすい
ペットボトルを飲むときは、飲み口に直接口をつけて飲みますよね。
その際に唾液とともにたくさんの雑菌が水に入り込むため、水が劣化します。
水というより容器の期限
実は、ペットボトルにはどんなに密閉しても若干空気を通す性質があります。
何年も放置していると徐々に空気が入ってきてしまい、味やにおいが変わる可能性があります。
周囲のにおいが移ってにおいや味が変化してしまうケースも。
水道水も変質する
ペットボトルの水に微生物が入り込むことはイメージしやすいですが、蛇口から出る水道水も扱い方によっては微生物が増加しやすい環境となりえます。
水道水の含有塩素が減少すると…
細菌などの不純物の繁殖を防ぐため、水道水に一定の塩素を含むことは義務付けられています。
しかし、塩素の臭いはプールでもおなじみの独特で鼻にくる臭い。
嫌いな人も多いので、浄水器を設置して飲み水の塩素を取り除くご家庭もあるかと思います。
また、水道水消毒用の塩素には効果を持続させられる期間がありますが、この期間を過ぎると残留塩素は少しずつ減少していきます。
こうした要因から塩素が減っていくと、水道水は微生物や雑菌が繁殖しやすい環境に代わってしまうのです。
気になる水の保存期間は?
ここからは、実際に購入したミネラルウォーターや汲み置きしている水道水について、保存期間や安全に飲むためのコツをお伝えします。
ペットボトル
開封してから1日以内に飲みきるべし
ペットボトルに記載がある賞味期限は「開封前」のもの。
いちど開封してしまったら、なるべく早く飲んでしまいましょう。
特に開封したペットボトルに直接口をつけた場合は、当日中に飲みきるのが良いでしょう。
とりわけ雑菌が繁殖しやすい夏場は要注意。容器の使いまわしもやめましょう。
水道水
常温で3日、冷蔵庫内で10日が目安
東京都水道局の発表によれば、「直射日光を避けて涼しい場所に保管した場合常温で3日、冷蔵庫内で10日程度は消毒用塩素の効果が持続する」ようです。
上述した通り残留塩素が減ると細菌の繁殖リスクが高くなります。保存期間が過ぎた水は雑用水として使用し、口にするのは避けましょう。
一度口をつけたコップやペットボトルの水は、唾液中の細菌が入り込んでおり腐りやすい状態です。
保存はできませんので、すぐに飲み切りましょう。飲みきれなかった場合は、もったいなくても捨ててしまいましょう。
お水の保存Q&A
沸騰させればOK?
カルキ臭さを気にして、水道水を沸騰させてから飲んでいる方も多いはず。
しかし上でもご説明したように、残留塩素は微生物や細菌の繁殖を抑えています。
沸騰させて残留塩素を除去した水は保存には向きません。
水道水を保存したい時は、水道の蛇口からそのまま容器に注ぐようにしましょう。
浄水器を使って塩素を取り除いている場合も同様です。
ペットボトルじゃなくコップに入れればOK?
飲みきれないことが分かっているのであれば、ペットボトルからコップにうつして飲み、冷蔵庫で保管するのがベター。
その場合は開封後から2~3日くらいが目安です。
ただし口からの雑菌が入らなくても、コップに移す際に封を開けていますよね。
空気に触れているため、同じように雑菌が入ります。
どんな飲み方にしても、開封後は早めに処理しきるに越したことはありません。
やっちゃダメ!ペットボトルの使いまわし
とりわけ夏場に気を付けてほしいのが、浄水器を通した水を使用済みのペットボトルに入れて持ち歩くこと。
ペットボトル自体に雑菌が入っているうえ、浄水器を通して塩素を取り除いてしまっているので、変質を招きやすい状態です。
「腐った」水の見分け方は?
購入してからあるいは汲んでから時間が経った水。
不安に思ったら、2つのポイントに気を付けて飲めるものかを確かめましょう。
- 色の変化は言語道断
- においが気になったら飲用は避けて
とてもカンタンな2点なので、どなたでもチェックできますよ。
色やにおいの変化は言語道断
池の水が赤や緑っぽく濁っている光景は、水の中で有機物が腐敗し微生物が繁殖しているのも理由のひとつ。
まず口に含まないかとは思いますが、水の色に変化があったらすぐに処分してしまいましょう。
においが気になったら飲用は避けて
色と同様にチェックしたいのが水のにおい。
有機物の腐敗により硫黄のようなにおいや雑巾のようなにおいがした場合、飲まずに捨ててしまいましょう。
開封したらできるだけ早めに飲もう
毎日の生活に欠かせないものだからこそ、おいしく安全なお水をいただきたいですよね。
保存や容器の扱い方に気を付け、正しい保存方法を守りましょう。