殺菌や消毒に有効な「加熱」。

新型コロナウイルスを含む多くのウイルスや細菌は、熱湯を使って消毒することにより死滅します。

赤ちゃんの哺乳瓶やふきんなどを煮沸消毒した経験がある人も多いのではないでしょうか。

沸騰させたお湯以外の加熱方法としては、お手軽な電子レンジを使用するシーンも多いです。

では、電子レンジでの加熱も煮沸消毒と同様に細菌やウイルスを殺す効果があるのでしょうか?

  1. 電子レンジにも殺菌効果はある?
  2. 電子レンジでなんでも殺菌できる?
  3. 消毒が生活の一部に。電子レンジも活用して

電子レンジにも殺菌効果はある?

結論から言うと、電子レンジでの加熱にも殺菌効果が認められています。

厚生労働省のガイドラインや公的機関での研究から実証されているのです。

厚生労働省の見解は?

食中毒を引き起こす腸管出血性大腸菌(O-157)を例に見てみましょう。

O-157は高温処理に弱く、75℃で1分間以上加熱することで死滅します。

ガイドライン「腸管出血性大腸菌感染症の予防対策について」によると、レンジで食品を調理する場合も加熱温度を同じ75℃にして食品全体をむらなく1分間以上加熱すれば、菌は死滅するとされています。

実験でも検証されている

おしぼりを使った実験古い実験にはなりますが、岡山大学医学部細菌学教室が発表している論文「電子レンジによるおしぼり付着菌の殺菌効果」も電子レンジの効果を確かめる参考になります。

研究の方法は

この研究の手順をおおまかにまとめると以下の通り。

  • 菌液を培養する
  • 高圧滅菌済みのおしぼりを菌液に浸して汚染する
  • 電子レンジの中央に置き、1分~5分チン(マイクロ波を照射)する
  • 照射後すぐに滅菌ポリ袋に入れ、氷で冷やす

この実験は電子レンジが販売され始めた昭和50年代後期のものですが、マイクロ派での加熱は現在の機器でも行われています。

実験の結果は?

実験の結果、一般的な加熱消毒で死滅する細菌は電子レンジでの加熱でも2分~3分で同様に死滅していることがわかりました。

また、実験では乾燥したおしぼりよりも湿って水分を含んだもののほうがより効果的に殺菌がなされていることがわかっています。

電子レンジでなんでも殺菌できる?

電子レンジで消毒できるものは?殺菌・除菌の機会が多いものって、身の回りにあふれていますよね。

加熱が必須の食べ物(生鮮食品)はもちろん、食材保存用の容器やお弁当箱、ふきんやタオルなど家族で共有するもの、マスクなど、挙げたらきりがありません。

ここからは、アイテム別に電子レンジでの殺菌が向いているかをチェックしていきましょう。

タオルやふきん

おしぼりへの殺菌効果が実験で立証されていることから分かるように、タオルやふきんなど濡らしても問題ない布製のものは電子レンジでの殺菌が可能です。

キッチン周りを清潔に保ちたい場合はタオルにも気を配って。

タオルやふきんを電子レンジで殺菌

悪臭を放つ原因となる雑菌を撃退すれば、嫌なニオイの悩みも解決できますよ。

  • タオルを水で濡らし軽く絞る
  • 絞った状態のタオルをラップで包む
  • 500wまたは600wで1分~1分30秒チンする
  • もう一度洗濯する

ポイントは水で濡らしてから電子レンジに入れることです。

マスク

新型コロナウイルスが広まりマスクが品薄になった時、なんとか手持ちのマスクを再利用したいと考えた人もいたのではないでしょうか。

アメリカにおいても同様で、電子レンジを使ってマスクを消毒しようと試みた人がいるようです。

しかし、これはとても危険な行為。

マスクの加熱は火災の原因に

アメリカ・ニューハンプシャー州の消防局は2020年、フェイスブックにマスクの電子レンジ加熱に対する注意喚起のポストを投稿しました。

記事中には「マスクの殺菌のために電子レンジを利用するのは、火災を引き起こす原因となるとても危険な考え方です」とあります。

上で紹介したおしぼりやふきんなどと異なり、マスクは濡らすことを想定していないもの。

乾いた状態で加熱してしまうと、マスクは燃えてしまいます。

マスクにはワイヤーなど金具が使われている場合も多いので、電子レンジでの殺菌は絶対にやめましょう。

スポンジ

スポンジはキッチンの中でも特に様々な菌がたくさん繁殖しているものです。

ふきんなどと同じように電子レンジを使って殺菌することはできますが、より念入りに殺菌消毒を行うため漂白剤を使うことをおすすめします。

保存用容器やお弁当箱

食材の冷蔵庫保存に活用したい容器やお弁当箱も、電子レンジより漂白剤や煮沸消毒を活用するのがベターです。

プラスチックでできているお弁当箱など、素材によっては煮沸消毒で変形してしまう可能性があるので注意しましょう。

まな板や包丁

料理に不可欠なまな板は、使った後雑菌の温床になっています。

特に生肉などの食材を切った後は、必ず菌を殺して清潔に保ちましょう。

電子レンジではなく、漂白剤やアルコール消毒剤を使って殺菌します。

手軽に使えるスプレータイプの製品を持っていると便利ですね。

哺乳瓶

近年は水と哺乳類を入れて電子レンジにかけるだけで手軽に消毒ができるグッズや専用ケースが登場し、ベビー用品店やインターネットショップなどで販売されています。

ブラシを使って哺乳瓶をよく洗ったら、説明書などの指示に従って適切な使い方で電子レンジにかけましょう。

消毒が生活の一部に。電子レンジも活用して

消毒は生活の一部新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス、食中毒につながる細菌など、殺菌や消毒、除菌で対処したい病気のもととなるものは至るところに発生しています。

身の回りの掃除と同じように、消毒もきちんと行いましょう。

ものによっては電子レンジを使って菌を殺すこともできますので、使用したいアイテムに合わせて煮沸消毒や漂白剤、アルコール消毒液などと使い分けましょう。