梅雨に入ると、気温や湿度が一気に高くなる感じがしますよね。
個人的に雨は嫌いではないのですが、作り置きをしているので食中毒がつい気になってしまいます。
食中毒の原因は「ノロウイルス」などのウイルスや「O-157」などの細菌。これらが付着した食べ物を口にすることで体に侵入します。
とくに細菌の場合は、気温や湿度が高くなると増殖が活発化するうえ、ウイルスと異なり食品中で増殖してしまいます。
ですので、日頃から家庭でもしっかり対策することが必要なんです。
今回は、細菌性の食中毒が増える梅雨から夏にかけての対策方法や細菌の性質など、暮らしに欠かせない食中毒の知識について解説します。
食中毒予防の3原則
食中毒の原因となる細菌を対策する際に大切な「3つの原則」がこちら。
- 細菌をつけない
- 細菌を増やさない
- 細菌をやっつける
この3点は、政府広報オンラインでも公式に勧告されているんですよ。
細菌を「つけない」
食中毒の原因菌は食べ物に付着することで体内に取り込まれますから、原因菌をつけないように心がけることがとても重要。
手洗いをしっかり!
「つけない」ことで大切なのは、何と言っても雑菌だらけの手をきちんと洗うことです。
- 調理を始める前
- 食品(特に生肉や生魚、卵)を扱う前後
- 調理途中でトイレに行ったり、鼻をかんだりした後
- 食事前
- 残り物や余った食品を扱う前
- 動物に触れた後
- おむつやペットの糞など、汚物に触った後
上のようなタイミングでは、必ず入念な手洗いを心がけましょう。
手指消毒用のアルコール消毒液を使用するのも効果的です。
器具の扱いにも気を付けて
細菌を増やしやすい肉や魚など生鮮食品の生食が、慎重に気を使わないと食中毒を起こしかねないと有名ですよね。
加熱してしまえば菌は死にますが、菌が付着していた生鮮食品を切ったまな板や包丁などの器具には注意が必要です。
なぜなら、器具を汚染された状態で使い回してしまうと、加熱しないで食べる野菜などに菌が付着してしまうから。
生肉や魚を扱った器具は使用するたびきれいに洗い、なるべくアルコール除菌剤などで除菌を行いましょう。
器具によっては熱湯による消毒もかなり効果的です。
サラダの材料など、加熱せずに食べるものを先に取り扱うのもいいですね。
細菌を「増やさない」
ほとんどの細菌は、高温多湿な環境で活発に増殖します。
その反面、10℃以下の環境では増え方がゆるやかになり、マイナス15℃を下回ると増殖は停止します。
低温保存が食品管理のカギ
食材を購入したら、できるだけ早く冷蔵庫に入れましょう。
特に加工されていない生鮮食品や保存料などが入っていないお総菜は、買って帰ったらすぐに低温保存を。
冷蔵庫に入れたものであっても、ゆるやかになるだけでありあくまで細菌は増殖します。
食品は早めに食べきりましょう。
お弁当も出先で低温保存できれば◎。
職場などで冷蔵庫があれば利用しましょう。学校のような冷蔵設備が使えない場所では保冷剤を活用するのがおすすめです。
余り物の処理も気を抜かないで
余った食品や食べ残しは、保存の仕方を誤ると細菌の温床となってしまいます。
- 余りは密封できる容器やジッパー付きの袋に入れる
- ていねいにラップをかける
- 汁物も移して冷蔵保存する
特に季節が初夏~夏場であれば、常温で放置していた食べ残しのカレーやお味噌汁などをふたたび食べるのは避けることが賢明です。
細菌を「やっつける」
多くの細菌は加熱によって死滅しますので、肉や魚はもちろん、野菜なども加熱して食べれば安全です。特に肉料理は中心までよく加熱することが大事です。中心部を75℃で1分以上加熱することが目安です。
ふきんやまな板、包丁などの調理器具にも、細菌やウイルスが付着します。特に肉や魚、卵などを使った後の調理器具は、洗剤でよく洗ってから、熱湯をかけて殺菌しましょう。台所用殺菌剤の使用も効果的です。
食中毒の原因菌と症状は?
食中毒の原因となる菌の中には、ニュースなどで報道され耳馴染みのあるものもあるのではないでしょうか。
代表的な菌の種類について、特徴や症状を解説します。
腸管出血性大腸菌(O-157)
「大腸菌」は、健康な人や家畜の腸内にも存在する細菌です。
ほとんどの大腸菌は無害ですが、O-157など人の体に悪影響を及ぼすものがあります。
特徴は?
O-157は汚染された井戸水やサラダ、生レバー、ユッケなどの生肉から感染することが多い細菌です。
- 低温に強く、冷凍庫内でも生存する
- 酸性に強く、胃酸にも負けない
- 熱に弱く、75℃1分間の加熱で死滅する
温かく栄養分と水分のあるところで増殖しやすいので、清潔を保つとともに乾燥と低温も維持することが「つけない」ポイントです。夏季の感染症例が多いですが、気温の低い季節でも感染することがあります。
外国では、サラダによる感染症例もあるようです。
症状は?
O-157による症状例は以下の通りです。
- 下痢、腹痛
- 発熱
- 倦怠感やむくみ、乏尿
感染者の約半数は、4~8日の潜伏期間ののちに、激しい腹痛を伴った水様便(水っぽい下痢)が頻回に起こり、まもなく血便(血液の混じった下痢)が出ます。
成人では、感染しても無症状や軽い下痢で終わります。
しかし抵抗力が弱い乳幼児や小児、高齢者に感染してしまうと、腎機能や神経障害などの後遺症を引き起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)脳症を併発してしまう可能性があります。
カンピロバクター
カンピロバクターは、家畜やペット、野鳥、野生動物など多くの動物が保菌する細菌です。
比較的少ない菌の数でも、体内に取り込むと発症してしまいます。
特徴は?
日本では鶏肉製品からの感染事例が多く、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のタタキ、鶏わさのほか、加熱不足の調理品などからも感染します。
- 比較的低温に強く、冷凍庫内でも増殖する
- 乾燥や熱に弱く、通常調理での加熱で死滅する
- 酸素が少ない状態を好む
カンピロパクターは低温でも増殖するため、年中を通して感染してしまう可能性が高い細菌です。
通常の大気条件下では増殖できないため、食品中での生存期間が大きく影響します。
低温では1ヶ月程度の長期に渡って生存するかわり、20℃以上の常温では数日で死滅します。
症状は?
カンピロパクターによる症状例は以下の通りです。
- 下痢、腹痛
- 発熱
- 吐き気やおう吐
- 頭痛
- 悪寒、倦怠感
死亡例や重篤例が少なく、多くの患者は1週間ほどで治癒します。発症までの潜伏期間が1日~7日と長いことも特徴です。
死亡例や重篤例はまれですが、乳幼児や高齢者など抵抗力の弱い人は重症化する可能性もあります。
サルモネラ
サルモネラはヒトや家畜の腸内のほか、河川や下水など自然界の様々なところに生息していています。
ペットが保菌している場合もあります。
特徴は?
サルモネラは食肉のほか、乳製品や卵による感染事例が多い細菌です。
生卵の感染事例が多数ですが、洋菓子やオムレツなど加熱するものに汚染された卵を使用しても感染します。
消費期限を過ぎた卵は絶対に使用しないこと!
- 低温に強い
- 少量の菌でも食中毒を発症する
- 乾燥に強いが加熱には弱く、調理時十分に火を通せば死滅する
卵は冷蔵庫から頻繁に出し入れすると温度変化や水滴によって痛みやすくなります。
使う分だけこまめに出すようにしましょう。
症状は?
サルモネラによる症状例は以下の通りです。
- 発熱
- 腹痛、下痢
- 吐き気やおう吐
サルモネラによる症状は比較的軽く、医師の診察と治療を必要とせず治るケースが多くを占めています。
ですが、抵抗力の弱い人が細菌を取り込んでしまうと重篤化する可能性もあるので、注意が必要です。
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌はヒトの手指・鼻・のど・耳・皮ふなどに広く生息する細菌です。
健康な人の20〜30%が保菌しているとされています。
特徴は?
黄色ブドウ球菌はヒトの皮膚に生息するという性質から、手作りの食べ物から感染する確率が高い細菌です。
- 低温でも徐々に増殖する
- 毒素は加熱では破壊できない
大きなポイントは耐熱性の強さ。黄色ブドウ球菌の毒素を発見したアメリカの故G.M.Dack教授は、ブドウ球菌を100℃で1時間加熱しても生き延びていたことを発見しています。
残った調理済食品の再加熱利用は避けましょう。
また、手の傷や手荒れの部分には、他の部位よりも多くの黄色ブドウ球菌が存在する可能性が高いです。
怪我や手荒れがある場合、素手で食品を触るのはやめましょう。
症状は?
黄色ブドウ球菌による症状例は以下の通りです。
- 腹痛
- 吐き気
- おう吐
- 下痢
発熱はあまり見られません。
発症までの潜伏時間が短いため、原因の特定が容易な点も特徴です。
■食中毒がミステリに?
引用:www.amazon.co.jp/dp/4796684816
元料理人の作家によるグルメミステリ「蜜蜂のデザート」(拓未司著)では、黄色ブドウ球菌による食中毒事件が登場します。
衛生管理や食中毒対策を徹底して営業するビストロやパティスリーの苦悩が、一般人には分からない元業界人ならではの視点で書かれています。
ライトにすぐ読める本なので、雨の日のおうち時間に手に取ってみてはいかがでしょうか?
衛生管理に大切な「消毒」も忘れず
買い物から帰ったら食材をすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる、食材をしっかり加熱するといった基本的なことを徹底するだけでも、かなり効果は期待できます。
しかし、食中毒の対策はしすぎて困るものでもありません。
こまめに除菌・殺菌ができるアルコールスプレーを使い、調理器具に吹きかけて衛生を維持することにも心がけましょう。