収束のきざしが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。
外出時の予防対策はすっかり日常に定着していますが、家の中となると気が緩む人も多いのではないでしょうか。
家庭内でのウイルス感染例は少なくありません。
ドアノブや受話器などの共有部分が原因でクラスターが発生した事例もあり、屋内でも気は抜けないものです。
コロナウイルスだけではなく、インフルエンザの集団感染が引き起こされることも。
今回は家族全員が頻繁に手を触れるドアノブに焦点を当てて、家庭での効果的な感染対策についてご説明します。
ドアノブがコロナ集団感染の原因に!?
2021年1月24日付の静岡新聞に、静岡県掛川市内の事業所で従業員11人の感染が判明しクラスター(感染者集団)認定を受けたという記事が掲載されました。
記事元:静岡新聞「静岡県内で新たに50人感染 掛川でクラスター【新型コロナ】」
この集団感染において、原因のひとつとみられるのがドアノブ。
事業場では換気やマスクの着用が徹底されていたものの、共有部分の消毒が不十分だった可能性があるようです。
ドアノブの効果的な消毒方法は?
心配なドアノブからの感染を防ぐため、消毒効果のあるものを使った清掃を心掛けましょう。
有効な対策方法は大きく分けて5つ
厚生労働省のWebサイト「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」によると、モノに付着したウイルス対策には次の5つが効果的とされています。
- 塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
- 次亜塩素酸水
- アルコール
- 熱水
- 家庭用洗剤(界面活性剤)
入手のしやすさや消毒効果、成分の強さなどがそれぞれ異なります。
用途に合わせて選びやすくするため、ここからはそれぞれの特徴やメリット、デメリットについてご紹介します。
塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
- 用意がカンタン
- 消毒効果が高い
- 取り扱いに注意が必要
- 素材によっては腐食の可能性も
市販の「ハイター」「ブリーチ」など塩素系漂白剤の主成分が「次亜塩素酸ナトリウム」。
これらの塩素系漂白剤を、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が0.05%になるように薄めて拭き取り、その後水拭きする方法が推奨されています。
花王 キッチンハイター 台所用漂白剤
引用:www.amazon.co.jp/dp/B000FQMTIU
塩素系漂白剤を常備しているご家庭は多いと思いますし、ドラッグストアやスーパーなどで入手もしやすい商品ですよね。
消毒効果も高く、厚生労働省の感染防止対策チラシには「アルコールよりも有効」と記載されています。
ただ皮膚や粘膜への刺激が強いため、誤って目に入ったり飲み込んでしまったりしないよう、細心の注意を払って作業を行う必要があります。
酸性のものと混ぜると塩素ガスが発生するので、周辺環境にも気を配らなければいけません。
また、ドアノブの素材としてもメジャーな金属に使用すると腐食してしまう可能性があります。心配であれば使用は避けましょう。
次亜塩素酸水
- インターネットサイトやドラッグストアで購入できる
- 扱いが難しい
- 適切なものの購入には知識が必要
- 消毒できるものが限定される
次亜塩素酸水は通販やドラッグストアなどで入手できる溶液ですが、扱いの難しさが難点。
引用:www.amazon.co.jp/dp/B07T8B4YNN
強い酸化作用をもつため皮膚や粘膜への付着はもちろん、吸入による人体へのダメージも大。取り扱いには十分な注意が求められます。
また、紫外線で次亜塩素酸が分解されるため、保管時は冷暗所にしまい早めに使いきらなければなりません。
加えて次亜塩素酸水を使ってモノへの対策をするときは、「十分な量の次亜塩素酸水で表面をヒタヒタに濡らす」か「消毒したいものに20秒以上掛け流す」必要があります。
どちらもドアノブの消毒に使うには難しそうですね。
使用方法も限定されますので、管理や知識面で不安があるなら使用を避けることがベターです。
アルコール
- 使いやすい
- 同じ製剤を手指の消毒にも使用できる
- 濃度の確認が必須
- 身近なものの消毒効果としては、他に少し劣る
新しい生活様式としてすっかり定着した手指のアルコール消毒。
手指だけでなくモノを消毒するのにも効果的です。
サラヤ アルペット手指消毒用1L
<引用:www.amazon.co.jp/dp/B00B4TB06Y
濃度70%以上95%以下のエタノールで拭き取ることで、モノに付着したウイルスを不活化できます。
販売されているアルコール消毒液の中には基準より低い濃度のものも多いので、購入時は濃度のチェックをお忘れなく。
なお、60%台のエタノールによる消毒でも一定の有効性があると考えられる報告があります。
70%以上のエタノールが入手困難な場合には、60%台のエタノールを使用した消毒も差し支えないようです。(厚生労働省より発表)
ただし、厚生労働省の感染防止対策用チラシには以下のような表記もあります。
『食器・手すり・ドアノブなど身近な物の消毒には、アルコールよりも、熱水や塩素系漂白剤、及び一部の洗剤が有効です。』
ドアノブをより強力に消毒したいなら、アルコール以外の方法がいいかもしれません。
熱水
- 用意がカンタン
- 安全性が高い
- ドアノブのような固定されたものへの消毒は難しい
ふきんの煮沸消毒などに用いる熱水は、新型コロナウイルスについても有効です。
80℃のお湯に10分間さらすことでウイルスの除去が可能です。
ただ、お湯に浸す必要があることから、ドアノブの消毒には不向きです。
基本的には食器や小物などへの消毒方法と言えるでしょう。
家庭用洗剤(界面活性剤)
- 用意がカンタン(市販の洗剤でOK!)
- 使用しやすい
- 新型コロナウイルスへの有効性が確認されている
- 洗剤に有効成分が含まれているか確認が必要
- コロナウイルス以外の病原体については効果が不明
スポンジにつけて使う食器用洗剤やフローリングやお風呂用などの住宅・家具用洗剤も、一部の商品が消毒に活用できます。
スクラビングバブル 石鹸カスに強いバスクリーナー シトラスの香り
引用:www.amazon.co.jp/dp/B07BFL3PBH
消毒に使えるものかそうでないかの見分け方は、「製品に含まれる界面活性剤」の種類。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は2020年、経済産業省の要請を受けて消毒方法の有効性について検証を行いました。
その結果、9種類の界面活性剤について、新型コロナウイルスに有効であることが確認できたそうです。
- 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
- アルキルグリコシド(0.1%以上)
- アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
- 塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
- 塩化ベンゼトニウム(0.05%以上)
- 塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01%以上)
- ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
- 純石けん分(脂肪酸カリウム)(0.24%以上)
- 純石けん分(脂肪酸ナトリウム)(0.22%以上)
これらの有効な界面活性剤が含まれた洗剤や、それを薄めた自家製消毒液を使えば、カンタンにドアノブの消毒をすることができます。
毎日の生活で使用する洗剤なので、普段通りに扱えば体への害もありません。
ドアノブの消毒に最も向いた方法と言えるでしょう。
消毒に有効な成分を含んだ洗剤製品リストがNITEから発表されています。内容は随時更新。ご家庭にあるものが対応しているか、チェックしてみましょう!
※上記は「新型コロナウイルスに有効」と確認された製品の一覧となります。
ノロウイルスやインフルエンザウイルスなど、新型コロナウイルス以外の病原体に対しての効果を保証するものではありません。
ドアノブを消毒してみよう
家庭用洗剤を使う
手軽さと安全性の観点から、家庭用洗剤を使った消毒はドアノブにぴったり。
以下の手順通りに清掃をしてみましょう。
台所用洗剤でキレイに
- たらいや洗面器に500mlの水を張る
- ①に台所用洗剤を小さじ5杯~大さじ1杯ほど入れ軽く混ぜ合わせる。
- キッチンペーパーや清潔な布に②の溶液を染み込ませる
- 余分な液を絞って気になるところをまんべんなく拭き取る
- 拭いてから5分ほど経ったら、キッチンペーパーや清潔な布で水拭きする
★プラスチック部分は放置すると傷むことがあるため、必ずこの手順を踏む - 空拭きする
住宅・家具用洗剤でキレイに
- 製品の取り扱い説明をよく読み、記載された使用方法通りに掃除を行う
家製消毒液の作り置きは避けて
ドアノブのほかにも受話器や電気のスイッチなど、様々なところに使用できる自家製消毒液。
便利なアイテムですが、注意点がふたつあります。
- 作り置きができない
- 皮膚の消毒には使えない
作ってから時間が経った液は消毒の効果を失うため、手軽に使いたいからと一度に大量生産してしまうのはNG。
また安全性の観点から手指などにはおすすめできません。
掃除をしたい時はその都度こまめに液を用意し、皮膚を消毒したい時には対応するアルコール製剤などを使用しましょう。
洗剤以外の製品を使う
界面活性剤入り洗剤以外の製品でドアノブの消毒を行う際は、以下のような方法が効果的です。
- モノの消毒に使える消毒剤を乾いたタオルやペーパータオルに含ませる
- まんべんなく拭き上げる
- 使用した消毒剤によっては、水拭きで仕上げを行う
ポイントは一方向にしっかり拭き取ること。汚れやウイルスが広がるのを防ぐことができます。
ドアノブへの直接スプレーはダメ!
不安なドアノブからの接触感染。
すぐにでも消毒に取り掛かりたいところですが、直接消毒液をスプレーするのはNGです。
これは噴霧の勢いで付着しているウイルスが空気中に飛び散る恐れがあるため。
さらに、壁の汚れやシミにもつながってしまいます。
上記のように液を布やペーパーに含ませて拭き取りましょう。
消毒効果を高めるには
ポイントは、こまめに消毒を行うこと。
玄関やリビングのドアなど、家族全員が1日に何度も触れる場所を重点的にチェックしましょう。
ひとつの基準は、厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症の軽症者等の宿泊療養マニュアル」。
このガイドラインには 「ドアノブなどよく触る部分やトイレは1日1回以上」との記載があります。
まずはこの基準通り、日に1回の消毒から始めてみるのがおすすめですよ。
また、触る前に手や指を消毒することも、接触感染のリスクを減らします。
清潔なドアノブで感染症対策
ドアノブは家族全員が複数回触れることから、新型コロナウイルスなどの集団感染の原因になりうる場所。
定期的に消毒してキレイな状態を保つことは、家族をウイルスから守ることにもつながります。
正しい消毒を心がけ、家庭内感染を阻止しましょう!